「ユーザー数は追いません」NewsPicksの広告収益に頼らないメディア運営とは?


 

連載「メディアメーカー」

スタートアップに特化した情報や考察を発信するブログメディア、The Startup編集長の梅木雄平がメディアにまつわる人々を取材し、メディアの未来を紐解いていく。

1日に何本くらいの記事を読むだろうか?RSSリーダーに始まり、twitterやFacebookなどのソーシャルメディア、そしてGunosyやSmartNewsというキュレーションメディアを通して記事を読むという行動が浸透してきている。

私自身がよく使う経済情報に特化したキュレーションメディア、NewsPicks(ニューズピックス)を今回は紹介しよう。なんというか、NewsPicksを毎日見ているだけで頭が良くなれる。気がする。同サービスを運営するユーザベース代表取締役梅田優祐に話を聞いた。


付加価値の高い専門家のコメント付きニュースを、インターネット化できないか

NewsPicksを簡単に説明しよう。まずTwitterのように人をフォローする。記事をコメント付きないしはコメントなしで「Pick(ピック)」する(twitterでいえばtweetにあたる)。一つの記事に対するコメントが溜まっていき、多い時には一記事あたり100件ものコメント付きPickが集まる。

記事を読むだけではなく、専門家から意識の高い大学生まで幅広いコメントを眺められるのがNewsPicksの最大の価値だ。NewsPicksの概要を詳しく知りたい方は下記をご覧いただきたい。

参考記事:ユーザベース、経済情報に特化したニュースキュレーションサービス「NewsPicks」をリリース(The Startup)

梅木:どのような背景でNewsPicksを作ろうとお考えになったのでしょうか。

梅田:起業する前に投資銀行で働いていたのですが、毎朝、会社のアナリストがその日の重要なニュースをコメント付きでメールを送ってくれていて、それが何よりの仕事の情報ソースでした。自分よりも知識、経験のある方や、異なった視点の考え方をする人のコメント付きのニュースの価値は非常に高い。

そうした原体験をインターネットで再現できないかと思ったのが、NewsPicksを作ろうと思ったきっかけです。

梅木:2013年9月にリリースされたから、僕もNewsPicksはほぼ毎日目を通しています。様々な人のコメントを見れるのが本当に面白くて。同じコメントが付くメディアでは僕の大嫌いなはてぶも同じなのですが、どうしてこんなにコメントの質に差があるのでしょうか。

梅田:立ち上げに際して2つ工夫をしました。人と仕組みですね。

まずは専門家など質の高いコメントをしてくれそうな方を集めていったこと。当社はSPEEDA(スピーダ)という企業分析ツールを提供しており、社内に証券会社で勤務経験のある各セクターのアナリストがいます。こうした事業資産を活用できた点は大きいですね。

あとは堀江さんや夏野さん、グロービスの堀さんなどのインフルエンサーを巻きこんでいきました。

梅木:twitterでも影響力のある方でNewsPicksもヘビーに使っている方はけっこういますよね。

梅田:おかげさまで(笑)。仕組みとしては、1記事に1コメントしかできないようにしていて、コメントに対するアクションは「いいね!」しかできないようにしています。できるだけ炎上しない仕組みを心掛けました。

梅木:炎上しない仕組みですか…。勉強になりますね!

キュレーターを事業者で制限するのではなく、CGMで発掘する仕組みが成功

梅木:目標ユーザー数はどれくらいを目指しているのでしょうか。

梅田:実は数字はしばらく全て非公開でいこうと思っています。一ついえることはユーザー数やPVを追うことに意義を感じていません。

ユーザー数を伸ばして広告収益を狙うのではなく、ユーザーから課金する収益モデルの構築を目指しています。

梅木:NewsPicksのようなキュレーションメディアでユーザー課金を導入しているところはまだ見当たりませんね。国内でユーザー課金が成立しているオンラインメディアは日経新聞くらいではないかという説もあります。ユーザーに課金されるようなメディアに必要な要素は何であるとお考えでしょうか。

梅田:NewsPicksが大好きだというファンを作ることだと思っています。人を軸としたコメントを一覧で読むにはここしかないというのが最大の価値です。有料版では既存のオンライン課金メディアの記事も読めるという仕組みを考えています。

梅木:メディアの収益モデルというと広告モデルが一般的だと思うのですが、なぜ広告モデルを志向しないのでしょうか?

梅田:サービスを提供するユーザーから、そのサービスに満足してもらった対価としてお金をもらうことが双方の満足度を最大化させる一番自然な形だと思います。その上、対象ユーザー数が限られる経済領域では広告モデルではすぐに限界が来ると考えています。

紙の新聞の世界では月額4,000円以上支払うモデルが成立し、それが良質なコンテンツ作成に繋がる好循環がありました。ネットの世界に移行し、現在のPV至上主義、特にユーザー層が限定されるメディアでは今の延長線上に未来があるようにはどうしても思えなく、広告ではなく課金モデルを成功させる必要があると思います。

梅木:専門家や有識者によるコメントが最大の付加価値ですが、コメントできるキュレーターを制限しようという考えはなかったのでしょうか。

梅田:その考えはもちろんありました。キュレーターが制限されていた方が質は担保しやすい。しかし、我々がリーチできていないだけですごく良いコメントをしてくれる人は絶対にいると考えて、最初から誰でもキュレーターになれるオープンな場としました。コメントの質が良ければ「いいね!」が入るので、ランキングの上の方に表示されていきます。そういったキュレーターのスターを発掘できる仕組みが重要だと思っていました。

梅木:そうした背景があったのですね。世界銀行のヘビーユーザーの方や、意識が高い高校生など、ユーザベース側のネットワークにいなそうなキュレーターが市場原理で「いいね!」を集めてスター化しているのは面白いなと思って見ていました。

PV偏重の広告モデルではなく、熱狂的なファンから課金する収益モデルを

梅木:どのような属性の方がNewsPicksを使っているのでしょうか?

梅田:金融かIT関連の仕事をしている方が多いようです。NewsPicks上で好まれるコンテンツがあり、金融とIT両方が絡んでいるとコメントを多く集めやすい傾向があります。インターネットサービスの大型資金調達や、AmazonやAppleネタのウケが良いですね。今後は政治やマクロ経済に興味のあるユーザーを増やしたいと思っていて、その分野のキュレーターを増やしていきたいです。

梅木:どのようなコンテンツが好まれるかは、そこにいる読者属性によって異なるという話は興味深いですね。

梅田:興味を惹くタイトルの記事であることも重要ですが、たとえば堀江さんが「これは必読!」というコメント付きでPickするとその後他のユーザーのPickも伸びやすい。キュレーターのコメントの方がNewsPicks内で多くのユーザーに読まれるには重要な気がします。

終わりに

NewsPicksは実際にユーザーとして使っていると、記事に対する様々なコメントを眺めることができ、記事を読んだ上でそのコメントを眺めることで思考を深めたり、多角的な確度で事象を考える癖をつけることができるように思える。

冒頭で「使うだけで頭が良くなる。気がする」と主張したのは、そういうユーザー体験があったからだ。現に、私の周りでは熱狂的なNewsPicksファンが何人かいる。

我々メディア運営者はユーザー数やPVを伸ばすことに腐心しがちな傾向がある。その最たる例が、不必要な記事分割だ。稀に1記事が8分割されている記事もあり、そんな記事誰が読むんだよ。と僕は思ってページから離脱している。数字を追っていても、好ましいユーザー体験を提供できていないメディアにはユーザーは定着しない。

闇雲に数字を追うのではなく、サービスが実現する世界観を通して最高のユーザー体験を提供した上で、ユーザーから課金する。インターネットサービスではごく当たり前のマインドといえるが、メディア業界では決して当たり前とはいえない。NewsPicksのスタンスから、メディアが学ぶべきことは少なくない。

注:本記事はブランドコンテンツではない。梅木が純粋にお勧めするサービスだ。

 

プロフィール
梅田優祐
ユーザベース代表取締役。1981年、アメリカ合衆国ミシガン州生まれ。2004年に横浜国立大学経営学部を卒業後、コーポレイトディレクション、UBS証券を経て、2008年にユーザベースを設立。

 

著者プロフィール
寄稿者:梅木雄平

The Startup」編集長。慶應義塾大学卒業後、複数のスタートアップ企業での事業経験を経て、2013年にThe Startupを設立。スタートアップ業界のオピニオンメディアThe Startup運営の他、東洋経済オンラインや月刊事業構想への寄稿も手掛ける。

 


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